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【2025年税制改正・増税対策】富裕層・高所得者のための資産防衛ガイド

2025年から導入されるミニマムタックスにより、富裕層および高所得者層を取り巻く税制環境は、大きな転換点を迎えています。富裕層の金融資産への課税が強化される流れの中、これまでの資産防衛策は見直しを迫られています

本記事では、税制の変化にどう対応すべきかを考える上で、有効な選択肢の一つである不動産投資に焦点を当てて解説します。不動産投資のメリットとリスクの両面から、資産を守るための現実的な選択肢について、冷静に整理していきましょう。

【この記事のポイント】

 ・2025年から導入されるミニマムタックスは、富裕層の資産防衛策の見直しを迫る転換点となる 
 ・金融資産への課税が強化される流れの中、不動産投資が有効な選択肢の一つとなる 
 ・資産を守るためには、不動産投資のメリットとリスクの両面を理解し、冷静に判断する必要がある

ミニマムタックスとは――新制度を徹底解剖

ミニマムタックスとは、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置のことです。2025年(令和7年)1月1日以降に得られる所得に対して適用され、その所得に基づく最初の確定申告は2026年に行われます。

【この章のポイント】

 ・所得の金額そのものではなく、金融所得に偏ることで実効税率が低くなっている個人の「構成」がターゲットである 
 ・所得の大部分が金融所得の場合、合計所得が約10億円の段階で対象となる可能性がある 
 ・導入の背景には、所得1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」問題がある

課税の仕組み:実効税率22.5%は最低ラインではない

ミニマムタックスは単純な税率引き上げではなく、以下の計算で税額が決まります。

 ①通常の所得税額(A)を計算する:まず、給与所得の累進課税や金融所得の分離課税など、現行のルールに基づいて通常通り所得税額(復興特別所得税を含む)を計算します。
 ②比較基準となる税額(B)を計算する:次に、以下の式で基準となる税額を算出します。
(基準所得金額−3億3,000万円)×22.5%=基準税額(B)
 ③差額を納税する:もし基準税額(B)が通常の所得税額(A)を上回る場合、その差額 (B – A) を追加で納税しなければなりません。

※基準所得金額とは、申告不要とした株式譲渡所得等も含む包括的な所得のことでNISA等の利益は含まれません。

つまり、実効税率が22.5%に満たない場合、その差を埋めるための調整措置です。

真のターゲット:所得30億円の先にある本質

政府関係者の発言などから「年間所得30億円超が対象」という目安が広く報道されていますが、これは典型的な所得構成を前提とした試算に過ぎません。つまり、この制度の本質は、所得の金額そのものではなく、所得の「構成」にあります

所得の大部分が給与所得である場合、すでに高い累進税率が適用されているため、年収が30億円を超えてもこの新制度の対象にならない可能性があります。一方で、所得のほとんどが株式譲渡益や配当などの金融所得(税率20.315%)で占めている場合、合計所得が約10億円の段階で対象となる可能性があります。

この制度が狙うのは、絶対的な高所得者というよりも、「極めて高い所得を得ながら、金融所得中心のポートフォリオによって実効税率が著しく低く抑えられている個人」です。以下の表は、所得構成によって課税への影響がどう変わるかを示しています。

シナリオ 合計所得 所得構成 通常の所得税額 (A) (概算) 基準税額 (B) (概算) 追加納税額 (B-A)
1. 企業オーナー経営者 35億円 給与所得10億円、株式譲渡益25億円 8.4億円 7.1億円 0円 (BがAを下回る)
2. M&A創業者 11億円 株式譲渡益11億円 (給与なし) 1.7億円 1.7億円 0円 (BがAを下回る)
3. デイトレーダー 15億円 株式譲渡益15億円 (給与なし) 2.3億円 2.6億円 0.3億円 (BがAを上回る)
4. 超大型M&A創業者 31億円 株式譲渡益31億円 (給与なし) 4.7億円 6.2億円 1.5億円 (BがAを上回る)

※上記は簡略化した試算です。給与所得は最高税率が高いため通常の所得税額(A)も高くなります。一方、金融所得のみの場合、所得が約10億円を超えると基準税額(B)が通常の所得税額(A)を上回り、追加納税が発生する可能性があります。

1億円の壁問題~ミニマムタックスが生まれた背景~

この新制度が導入された直接的な背景には、日本の所得税制における「1億円の壁」と呼ばれる現象があります。日本の所得税は、給与所得などに対しては所得が増えるほど税率が上がる累進課税(最高税率45%、住民税と合わせて約55%)を採用しています。しかし、株式譲渡益や配当などの金融所得は、所得額にかかわらず一律の税率(所得税・復興税で15.315%、住民税5%)です。

高所得者層は収入に占める金融所得の割合が高まるため、合計所得が1億円を超えたあたりから、全体の所得に対する実効税負担率が逆に低下し始める逆転現象が生じます。この税負担の公平性への批判から、政府はミニマムタックスを導入しました。これは、所得税負担率が著しく低い約200~300人の超富裕層を対象とする措置です。

金融資産の脆弱性――高まる課税強化リスク

今回のミニマムタックス導入は、金融資産を主軸とする富裕層にとって、より大きな潮流の始まりに過ぎない可能性があります。

2025年7月現在、株式の売却益や配当金にかかる税率は、所得税15%・復興特別所得税0.315%、住民税5%、を合わせた合計20.315%です。この税率の見直しは、かねてより政治的な議論の対象となってきました。

【この章のポイント】

 ・今回のミニマムタックス導入は、金融資産への課税強化という大きな流れの始まりに過ぎない可能性がある
 ・ミニマムタックスは市場への影響を避けるための「政治的妥協」の産物であり、根本解決ではない 
 ・金融所得課税(現在20.315%)の税率引き上げ議論は根強く残っており、金融資産に偏ったポートフォリオは持続的なリスクを抱えている

ミニマムタックスは「政治的妥協」の産物

「1億円の壁」問題を是正したいという公平性の要請と、市場を冷え込ませたくないという経済的な影響への懸念にも配慮する必要がありました。この二つのジレンマに直面した政府が下した結論が、今回のミニマムタックスでした。対象者を極めて少数に絞ることで、市場への広範な影響を回避しつつ、格差是正に取り組む姿勢を示したのです。

しかし、これは問題の根本解決ではありません。多くの投資家が関係する一律20.315%の税率そのものを引き上げるべきだという議論は、政府税制調査会や政党内で依然として根強く残っています。

この事実は、金融資産に偏ったポートフォリオを持つすべての投資家にとって、持続的なリスクを意味します。ミニマムタックスの対象外であるからと言って、決して安泰ではありません。将来、より広範な投資家層を対象とした金融所得課税の強化が再び議題に上る可能性は常に存在します。

金融資産への過度な集中を見直し、他の資産クラスへ分散させることは、目先の税制改正への対応だけでなく、長期的なリスク管理の観点からも極めて重要な戦略となるのです。

不動産投資という選択肢――節税とリスクの二面性


金融資産への課税圧力が高まる中、代替的な資産防衛策として不動産投資が注目されています。しかし、その活用にはメリットとデメリットの両面を深く理解する必要があります。

【この章のポイント】

 ・メリットは、減価償却によって現金支出を伴わずに課税所得を圧縮できること 
 ・注意点は、減価償却が税の「繰り延べ」に過ぎず、売却時の譲渡所得税が高額になる「出口の罠」があること 
 ・短期償却のメリットを最大化すると、売却時に税率の高い短期譲渡所得(約39%)で課税されるリスクがある

メリット:減価償却による課税所得の圧縮

不動産投資の最大の税務上のメリットは、減価償却という会計処理にあります。これは、建物の取得価額を、法的に定められた耐用年数にわたって分割し、毎年経費として計上する仕組みです。これは現金支出を伴わない経費のため、キャッシュフローを維持しつつ課税所得を圧縮できる強力な効果があります。

特に節税効果を高めるのが、中古資産に適用される簡便法という耐用年数の計算方法です。これにより、法定耐用年数を過ぎた物件に適用される簡便法では、法定耐用年数の20%に相当する年数(1年未満の端数切捨て)という、極めて短期間での償却が可能となります。

建物構造 法定耐用年数(新品) 中古資産の例(築年数) 簡便法による償却期間
木造 22年 25年 4年 (22年 × 0.2)
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下) 27年 30年 5年 (27年 × 0.2 = 5.4年 → 端数切捨)
鉄筋コンクリート造(RC造) 47年 50年 9年 (47年 × 0.2 = 9.4年 → 端数切捨)

この表が示すように、例えば築25年の木造アパートを取得した場合、建物価格をわずか4年で経費計上できるため、毎年の所得税・住民税を大幅に引き下げる効果が期待できます。

注意点:譲渡所得税という出口の罠

しかし、この減価償却には大きな注意点が存在します。それは、減価償却が税金の免除ではなく「繰り延べ」に過ぎないという事実です。むしろ、将来の税負担を増大させる要因となり得ます。

不動産を売却する際の利益(譲渡所得)は、売却価格 – (取得費 + 譲渡費用) で計算されます。ここで重要なのは、税務上の「取得費」は、購入価格 – これまでの減価償却費の累計額 となる点です。

つまり、減価償却費を計上すればするほど、売却時の取得費が減少し、結果として課税対象となる譲渡所得が膨れ上がってしまうのです。さらに、この譲渡所得にかかる税率は、不動産の所有期間(売却した年の1月1日時点)によって劇的に変わります。

 ・短期譲渡所得(所有期間5年以下):税率 39.63%(所得税30% + 復興税0.63% + 住民税9%)
 ・長期譲渡所得(所有期間5年超):税率 20.315%(所得税15% + 復興税0.315% + 住民税5%)

ここに戦略上の矛盾が生じます。 例えば築古木造物件で4年間の短期償却メリットを最大化すると、売却時に所有期間が5年以下となり、最も税率の高い短期譲渡所得(約39%)で課税されるリスクがあります。 これは、節税分が出口で一気に徴収されかねない出口の罠であり、注意が必要です

その他の実務的な利点とリスク

税務上の側面に加え、不動産投資には以下のような実利とリスクがあります。

■不動産投資の実務的な利点

 ・インフレヘッジ物価が上昇するインフレ局面では、実物資産である不動産の価値や家賃も上昇傾向にあり、資産価値と収益の両面でインフレに強いとされます。固定金利ローンなら、インフレで借入金の実質的な負担が軽くなる効果も期待できます。
 ・安定したキャッシュフロー:株式市場のような日々の価格変動に一喜一憂することなく、毎月安定した家賃収入が見込める点は、精神的な安定にも繋がります。
 ・相続税対策効果:現金や有価証券は時価(額面)で評価されますが、不動産は路線価や固定資産税評価額を基に評価されるため、一般的に時価よりも低い評価額となります。これにより、相続財産全体の評価額を圧縮し、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

■不動産投資のリスク

 ・現実的なリスク日本の空き家率は過去最高を更新しており、賃貸需要の高いエリアを慎重に選定しなければ空室リスクに直面します。また、変動金利でローンを組んだ場合の金利上昇リスク、経年劣化に伴う修繕費や設備交換のコストが想定以上に収益性を損なう可能性があります。
 ・修繕リスク:流動性が低いこと(売りたいときにすぐ現金化できない)など、多角的なリスク管理が不可欠です。

資産管理会社の設立(法人化)のメリットと注意点

所得が一定水準を超える個人にとって、資産管理会社を設立する法人化は、税負担を劇的に軽減する可能性を秘めた強力な選択肢です。しかし、その運用は複雑で、税務当局によるチェックも相応に厳しくなる傾向があります。

【この章のポイント】

 ・課税所得が年間800万円~900万円を超えると、法人化による節税メリットが見えてくる
 ・個人の最高税率約55%に対し、法人の実効税率約23%~34%という税率差を利用できる
 ・所得分散や経費計上の範囲拡大など、多くの税務メリットがある
 ・社会保険料の負担(報酬額の約30%)が最大のコストとなり、税務調査のリスクも考慮が必要

法人化の損益分岐点:いつ検討すべきか?

法人化の最大の動機は、個人と法人の税率差を利用することにあります。個人の所得税・住民税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、最高税率は約55%に達します。一方、法人税の実効税率は、所得規模にもよりますが概ね23%~34%程度で、個人の最高税率より大幅に低くなっています。

一般的に、不動産所得や事業所得などの課税所得が年間800万円~900万円を超えると、個人の税率が法人の実効税率を上回り始め、法人化による節税メリットが具体的に見えてきます。

課税所得金額 個人(所得税+住民税)の概算税額 法人(実効税率)の概算税額 年間節税額(概算)
500万円 108万円 121万円 ▲13万円
800万円 203万円 196万円 7万円
1,000万円 280万円 270万円 10万円
1,500万円 498万円 454万円 44万円
3,000万円 1,240万円 1,066万円 234万円

※個人の税額は各種控除を考慮しない概算です。

※法人の実効税率は中小企業の軽減税率等を考慮した概算値です。

※法人設立に伴う社会保険料負担は考慮しない場合の試算です。

所得800万円前後で税負担が逆転し、所得が増えるほど法人化のメリットが拡大することがわかります。

法人化がもたらす主な税務メリット

法人化のメリットは、単なる税率差だけではありません

 ①税率の適正化:個人の高い累進税率から、比較的低い法人税率へと移行できます。
 ②所得の分散:家族役員に報酬を支払うことで、合法的に所得を分散できます。
 ③経費計上の範囲拡大:役員退職金や生命保険料の一部など、個人よりも経費に計上できる範囲が広がります。
 ④損失の繰越期間:事業で赤字(欠損金)が出た場合、個人事業では3年間しか繰り越せませんが、法人は10年間繰り越すことができ、将来の黒字と相殺できます。
 ⑤相続対策への活用:会社の株式として財産を保有することで、株価対策を通じて相続財産の評価額を減額できる可能性があります。

運用の注意点:コスト、複雑さ、税務調査

資産管理会社は節税効果が大きいため、税務署から常に厳しくチェックされます。法人化すると、税務調査の対象になりやすいと考えておいた方がよいでしょう。

税務調査で特に注意したいのが、「同族会社の行為計算の否認」というルールです。これは、法人の仕組みを濫用して不当に税負担を軽減したと判断された場合、その取引が否認される厳しいものです。

<税務調査で否認されやすい典型的な事例>

 ・不相当に高額な管理料:市場価格(家賃収入の5~8%)を大幅に超える管理料を支払い、所得を不当に移転する。
 ・実態のない役員報酬:業務実態に見合わない高額な報酬を家族役員に支払う。
 ・偽装外注:実質的な雇用関係を業務委託に見せかけ、社会保険料の負担を免れる。

これらのリスクを回避するためには、すべての取引を市場価格に基づいて行い、契約書や議事録などの証拠書類を完璧に整備し、なぜその金額が妥当なのかを客観的に説明できる準備が不可欠です。

さらに、単純な税率比較だけでは見えてこない「隠れたコスト」も法人化の成否を左右します。

 ・設立・維持コスト:会社設立時の登記費用(株式会社で約25万円、合同会社で約10万円)に加え、税理士への顧問料など、継続的なランニングコストが発生します。
 ・法人住民税:法人は、たとえ赤字であっても、最低年間約7万円の法人住民税(均等割)を納付する義務があります。
 ・社会保険料:社会保険料の負担が最大のコストです。 役員報酬を支払うと加入が義務付けられ、会社と個人負担の合計で報酬額の約30%に達し、節税効果を大きく相殺する可能性があります。

法人化は、これらのメリットとデメリット、リスクを総合的にシミュレーションした上で、慎重に判断すべき高度な戦略と言えます。

これからの富裕層に求められる、新しい資産防衛の考え方


富裕層を取り巻く税金のルールは、常に変化する時代に入りました
。ただ資産を持っているだけで安心できた時代は終わり、これからは自ら積極的に、計画を立てて資産を守っていく必要があります。特に、今回の税制改正が示すように、株や投資信託といった金融資産に資産が偏っている状態は、今後のさらなる増税リスクを直接受けてしまうため、ポートフォリオの見直しを検討すべき状況と言えます。

この記事で解説した不動産投資や法人化といった対策は、たしかに効果は大きいですが、複雑で重大なリスクも隠されています。決して、ご自身だけで判断して実行できるものではなく、専門知識がなければ乗り越えられない大きな壁が存在します。「何から手をつけるべきか」「どの対策が最適」かなど、最適な一手を見出せずに悩む方は、税理士や不動産の専門家など、複数の専門家の視点を取り入れた総合的なアプローチご検討ください。

富裕層の増税対策・資産防衛なら、不動産投資に強い湘南ユーミーまちづくりコンソーシアムにご相談ください

私たち湘南ユーミー まちづくりコンソーシアムは、税制の変化や資産管理に不安を感じているお客様の資産防衛を、不動産投資によって成功に導いてきた専門家集団です。「金融資産と不動産の最適なバランスは?」「節税効果を最大化できる物件選びのポイントは?」「自分の所得規模で法人化するメリットとデメリットは?」など、お客様の資産状況を詳細に分析し、オーダーメイドの資産防衛プランをご提案します。

税制の変化に備えながら資産を守り、安心して資産を承継していく未来を私たちと一緒に創り上げていきましょう。