遊休地をどう活かす?手間を減らして収益につなげるための基本ガイド

所有しているのに使われていない土地「遊休地」を放置しておくと、固定資産税や草刈りなどの管理費がかさむうえ、近隣からの苦情や将来的な資産価値の低下につながるリスクがあります。しかし、視点を変えて土地の活用方法を検討することで、新たな収入源の確保や節税、さらには地域への貢献にもつながります。
この記事では、土地活用を検討するにあたって押さえるべき基礎知識から、初めてでも取り組みやすい方法、収益を意識した本格的な運用法まで網羅的に解説します。土地の現状に合わせて適切な選択肢を検討する際の材料として、ぜひ参考にしてください。
まず確認したい!活用を決める前の3つの視点
遊休地の有効活用を成功させるためには、計画初期段階での綿密な現状把握と分析が不可欠です。具体的には、以下の3つの視点から、所有する土地の特性と可能性を多角的に評価することが求められます。
① 用途地域や法規制の確認
土地の活用方法を検討するうえでまず確認すべきことは、その土地がどのような法的制約のもとにあるかです。特に重要なのが、都市計画法に基づいて定められる「用途地域」です。日本全国の都市計画区域内では、土地利用の混在を防ぎ、機能的な都市活動と良好な都市環境を確保する目的で、13種類の用途地域が指定されています。それぞれの用途地域ごとに、建築できる建物の種類、規模(建ぺい率、容積率、高さ制限など)、用途が建築基準法によって細かく規定されています。
所有土地がどの用途地域に該当するかは、所在する自治体の都市計画担当部署(例:都市計画課)の窓口で都市計画図を閲覧するか、自治体の公式ウェブサイトで公開されている都市計画情報サービスを利用することで確認できます。
さらに、特定の活用方法を検討する際には、個別の法規制にも注意が必要です。例えば、農地を駐車場や宅地など他の用途に転用する場合には農地法の許可が必須となります。なお、農地から宅地に転用すると固定資産税評価額が増加し、固定資産税が上昇することがある点に留意が必要です。また、一定規模以上(例:面積500㎡超)の駐車場を有料で設置・運営する場合には、駐車場法に基づく届出や、車路幅・出入口の位置といった設置基準の遵守が求められることがあります。
これらの個別の法規制への対応を怠ると、罰則の対象となるため、計画段階での確認が不可欠です。
② 土地の広さ・形状
土地の面積や形状も、選択可能な活用方法を大きく左右する要素です。例えば、駐車場として活用する場合、普通乗用車1台あたり約15㎡のスペースが必要とされます。貸し農園を考える場合、特定農地貸付法により、市民農園として区画を貸し出す際には1区画10a(1,000㎡)未満である必要があります。ただし、個人の趣味として小規模に始める場合は、1~2坪(約3.3~6.6㎡)からでも可能です。
一方で、アパートやマンションといった賃貸住宅や、有料老人ホームのような福祉施設を建設するには、ある程度のまとまった広さの土地が求められます。例えば、ワンルーム主体のアパートであれば、都心部で30坪程度から建築可能ですが、郊外で各戸に駐車場を併設するような計画では100坪以上の広さが必要となることもあります。
また、土地の形状も重要な検討ポイントです。一般的に整形地(正方形や長方形の土地)は設計の自由度が高く、建物を効率的に配置できます。一方、旗竿地(間口が狭く、奥に敷地が広がる形状の土地)や高低差のある土地(傾斜地)といった不整形地でも、工夫次第で十分に活用できます。
③ 周辺環境や賃貸ニーズ
土地が持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、土地そのものの特性だけでなく、周辺環境や地域社会がどのようなサービスや施設を求めているかを的確に把握することが不可欠です。
具体的に調査すべきポイントとしては、まず交通アクセスが挙げられます。最寄り駅からの距離(徒歩分数)、バス便の有無や頻度、主要な幹線道路へのアクセス状況などは、アパート・マンション経営や店舗・オフィス賃貸において集客力を左右する重要な要素です。
次に、生活利便施設の充実度も確認が必要です。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、病院、学校、公園などが近隣にどの程度存在するかは、特に住宅系の活用(アパート、戸建て賃貸など)において入居者の満足度や賃料水準に影響します。また、周辺の人口構成や世帯構成、昼間人口と夜間人口のバランス、競合となる施設や物件の状況なども重要な分析対象です。
これらの情報を総合的に分析し、地域社会のニーズと自身の土地の特性が合致する最適な活用方法を見つけ出すことが、持続可能で収益性の高い土地活用へとつながります。
初期費用を抑えて始められる!気軽な活用方法
「大きな投資は難しいけれど、まずは何か始めてみたい」という遊休地オーナーにとって、初期費用を比較的低く抑えられ、管理の手間も少ない活用方法は魅力的な選択肢となります。ここでは、代表的な3つの方法について、その特徴、メリット・デメリット、注意点を詳しく解説します。
コインパーキング
コインパーキングは、比較的小さなスペースでも始められる手軽な活用方法です。自動車1台分のスペース、具体的には普通乗用車で約15㎡、軽自動車で約7.2㎡程度の広さがあれば、狭小地や変形地でも対応しやすい点が大きな特徴です。運営方式は大きく「自主管理方式」と「一括借り上げ方式(サブリース)」に分けられます。
・自主管理方式
オーナー自身が設備投資から運営までを行います。初期費用として、アスファルト舗装、精算機、ロック板(またはゲート)、看板、照明などの設備導入費用(一式で100万円~500万円以上が目安)、場合によってはシステム導入費用や広告宣伝費用もかかり、総額で数百万円規模になることが一般的です。また、運営コストとして電気代、通信費、定期的な機器メンテナンス費用、清掃費用、集金手数料、損害保険料、土地の固定資産税・都市計画税などが継続的に発生します。
・一括借り上げ方式(サブリース)
駐車場運営会社に土地を貸し出し、運営会社が設備の設置から管理・運営まで全てを行います。オーナーは運営会社から毎月固定の賃料を受け取る形が一般的です。最大のメリットは、初期費用がほぼゼロ、あるいは簡単な整地費用(数万円~数十万円程度)で済む点です。また、駐車場の稼働状況に左右されず安定した収入が期待でき、運営管理の手間もかかりません。
貸し農園
都市部を中心に市民農園や家庭菜園への関心が高まっていることから、未使用の農地を整備して貸し出す「貸し農園」は、比較的少ない初期投資で始められる遊休地活用の一つです。貸し農園を開設するには、主に以下の3つの方法があり、それぞれ根拠となる法律や手続きが異なります。
・特定農地貸付法に基づく方法
農地の所有者や借受者が、農業委員会から承認を得て、レクリエーション目的の非営利栽培を行う者に農地を貸し付ける方法です。主な条件として、1区画の面積が10a(1,000㎡)未満であること、貸付期間が5年以内であることなどが定められています。
・市民農園整備促進法に基づく方法
市街化区域内または市町村が指定した「市民農園区域」内において、市民農園を開設する方法です。開設者は整備運営計画を作成し、市町村長の認定を受ける必要があります。この法律のメリットとして、トイレや休憩所といった市民農園施設の設置に伴う農地転用許可や開発許可について、特例措置が受けられる場合があります。
・農園利用方式
開設者自身が農地の耕作管理を行い、利用者は農作業の一部を体験する契約を結ぶ形態です。農地を貸し付けるわけではないため、上記の法律のような面積や期間の直接的な制限は少ないですが、開設者が農地を取得したり、施設を設置したりする際には、別途農地法第3条(権利移動の許可)や第4条・第5条(転用許可)の手続きが必要となる場合があります。
いずれの方法を選択する場合でも、遊休農地は法的には「農地」として扱われます。無許可で貸し借りを行うと農地法違反(ヤミ耕作)とみなされ、罰則の対象となる可能性があるため、必ず事前に農業委員会や自治体の農政担当部署に相談し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。
資材置き場・一時利用貸し
特に都市近郊や大規模な工事現場の周辺では、建設業者や土木工事業者が工事期間中に使用する資材や建設機械、車両などを一時的に保管するための場所として、遊休地が求められることがあります。このようなニーズに応える「資材置き場」としての土地貸しは、比較的少ない初期投資で始められる活用方法の一つです。
多くの場合、更地の状態のまま貸し出すことが可能で、初期費用はほとんどかからないか、かかっても簡単な整地費用程度で済むことがメリットです。賃料収入は、土地の広さ、立地条件(幹線道路へのアクセス、現場からの距離など)、契約期間によって大きく変動します。一般的には、その土地の年間固定資産税額の2~8倍程度が賃料の目安とされています。
アパート経営や駐車場経営といった他の土地活用方法と比較すると、収益性は低い傾向にありますが、土地が広大であれば月数万円の収入を得られるケースもあります。
収益性重視で考えるなら検討したい活用法
初期費用を抑えた活用法と比べると大きな投資を伴いますが、その分、長期的な安定収益や高い節税効果が期待できる本格的な土地活用方法も存在します。ここでは、代表的な3つの活用法について紹介します。
アパート・マンション経営
賃貸住宅の需要が見込めるエリアにおいて、アパートやマンションを建設し、入居者から家賃収入を得る経営は、遊休地活用の王道とも言える選択肢です。主な収益源は入居者からの家賃収入です。期待できる利回り(年間収益 ÷ 総投資額)は、物件の立地、築年数、建物の構造、部屋の広さや設備、管理状態など、多くの要因によって変動します。
アパート・マンション経営は、適切に行うことで様々な税務上のメリットを享受できる可能性があります。
・相続税対策
更地に賃貸アパートやマンションを建設すると、その土地は「貸家建付地」として評価され、更地の場合よりも相続税評価額が低くなります(一般的に15%~20%程度の評価減)。さらに、相続税評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」という制度の適用を受けられる場合があります。この特例は土地の用途によって、主に以下の表のように適用される内容が異なります。
宅地の種類 | 主な用途 | 限度面積 | 減額割合 |
特定居住用宅地等 | 被相続人が住んでいた土地 | 330㎡ | 80% |
特定事業用宅地等 | 被相続人が事業をしていた土地 | 400㎡ | 80% |
貸付事業用宅地等 | 被相続人が不動産貸付をしていた土地 | 200㎡ | 50% |
建物の相続税評価は、固定資産税評価額で評価されます。建築価額よりも低くなるのが一般的です。さらに賃貸している建物は借家権割合に賃貸割合を乗じた相当額が控除されます。
債務控除として、建築資金の借入金がある場合には相続財産から控除できます。
・固定資産税・都市計画税の軽減
居住用の建物が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税は最大で1/6、都市計画税は最大で1/3に軽減されます(200㎡以下の部分。200㎡を超えた部分はそれぞれ1/3、2/3に軽減)。
・所得税・住民税の節税(損益通算・減価償却・青色申告)
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- └損益通算:アパート経営によって生じた不動産所得が赤字になった場合、その赤字額を給与所得や事業所得など他の黒字の所得と相殺(損益通算)できます。これにより、課税対象となる所得全体が圧縮され、結果として所得税や住民税の負担が軽減される効果が期待できます。ただし、土地取得にかかる借入金利子の一部は損益通算の対象外となる場合があります。
- └減価償却費:建物の取得費用(土地は対象外)は、一括で経費計上するのではなく、法で定められた耐用年数に応じて分割し、毎年の経費として計上します。減価償却費は、実際には現金の支出を伴わない「帳簿上の経費」であるため、手元のキャッシュフローを悪化させることなく所得を圧縮し、税負担を軽減する効果があります。
- └青色申告:不動産所得が事業的規模、一般的にアパートなら10室以上、戸建てなら5棟以上であり、一定の帳簿書類を備え付けていれば、青色申告を選択(事前に所轄税務署長へ承認申請が必要)できます。電子申告または電子帳簿保存の場合、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます(それ以外は55万円または10万円)。また、純損失の3年間繰越控除も可能です。
事業計画を立てる際には、複数の物件やプランを比較検討し、現実的な家賃設定と稼働率に基づいた詳細な収支シミュレーションを行うことが重要です。
福祉施設や医療施設の誘致
日本の急速な高齢化を背景に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスセンターといった多様な高齢者向け施設や、クリニックなどの医療施設の需要は全国的に高まっています。
遊休地オーナーが福祉施設や医療施設を誘致する際の主な活用方法としては、以下の2つが代表的です。
・土地賃貸借方式(事業用定期借地方式)
オーナーは土地のみを福祉施設や医療施設の運営事業者に貸し出し、事業者が自己資金または融資により建物を建設し、運営します。オーナーは地代収入を得る形となり、建物の建設費用や運営に関するリスクを直接負わないため、初期投資を大幅に抑えられ、比較的低リスクで始められるメリットがあります。
・建物賃貸借方式(リースバック方式、サブリース方式とも呼ばれる)
オーナーが自己資金や融資により福祉施設や医療施設の建物を建設し、運営事業者に一括で貸し出します。オーナーは事業者から家賃収入を得ます。土地賃貸借方式に比べて高い収益性が期待できる一方、建物の建設費用という大きな初期投資が必要となります。万が一、運営事業者が撤退した場合、特殊な建物形状のため他の用途への転用が難しく、次のテナントが見つかりにくいというリスクも伴います。事業者から建設協力金を受け取り、建築費に充当し、月々の賃料と相殺していく「建設協力金方式」という手法もあります。
運営主体となる事業者には、社会福祉法人、医療法人、株式会社(民間企業)、NPO法人など様々な形態があります。社会福祉法人や医療法人は公的な信頼性が高い一方、株式会社(民間企業)は営利を目的とし、多様なサービス展開や効率的な運営ノウハウを持つ場合があります。訪問介護や地域密着型のデイサービスなどでは、民間企業の参入も活発です。
特にオーナーが建物を建設する場合、福祉・医療施設は建物が特殊な仕様のため、運営事業者が万が一撤退すると他の用途への転用が極めて困難になります。これは事業の継続性に関わる大きなリスクです。
だからこそ、土地活用の成否は、信頼できる優良な運営事業者を選定できるかどうかに大きく左右されます。事業者の過去の運営実績、財務状況の健全性、提供する介護・医療サービスの質、人材確保・育成体制、地域社会での評判などを多角的に調査し、慎重に比較検討することが重要です。
店舗・オフィス賃貸
人通りが多い駅周辺や繁華街、交通量の多い幹線道路沿いといった商業的ポテンシャルの高い土地、あるいはビジネス街や交通利便性の良い場所に遊休地を所有している場合、店舗やオフィスビルを建設し、テナントに賃貸することで収益を得る活用方法が有力な選択肢となります。
店舗の需要は、その地域の消費者の購買力やライフスタイル、競合店の状況などに左右されます。飲食店、物販店、サービス業など、業種によって求められる立地条件(例:視認性、アクセス、周辺の集客施設など)も異なります。
オフィス需要に関しては近年、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機としたリモートワークの普及により、そのあり方が大きく変化しました。一時期は都心部でもオフィスの空室率が上昇し、賃料が下落するなどの影響が見られましたが 、経済活動の再開とともに徐々に回復傾向も見られます。
しかし、企業によってはオフィススペースの縮小や分散化、より柔軟な働き方に対応できるフレキシブルオフィスへの移行などを進めており 、従来型の大規模オフィス一辺倒だった需要は多様化しています。
地方都市においては、依然としてオフィス需要が厳しい状況が続くエリアも存在します。今後のオフィス賃貸を考える上では、このような市場の変化を踏まえ、従来通りの施設では長期的な安定確保が難しくなっていることを認識する必要があります。そこで重要になるのが、通信環境の整備、個別ブースの設置、共有スペースの充実といった、新たな働き方に対応できる付加価値の提供です。
こうした取り組みは、厳しい市場環境下でもテナントから選ばれる要因となり、高い収益性を目指す上で不可欠です。しかし、相応の追加投資を要するため、需要予測を誤れば投資の回収が困難になるリスクも内包しています。成功すれば大きなリターンが期待できる反面、より慎重な事業計画が求められる投資方法と言えるでしょう。
専門家と一緒に最適な土地活用法を考えよう
遊休地を活用するには、法規制の確認、市場調査、事業計画の策定、資金調達、建築、そして運営管理と、多岐にわたる専門知識と経験が必要です。所有者自身がこれら全てを独力で遂行することは困難であり、多くの場合、各分野の専門家のサポートが不可欠となります。
信頼できる専門家と連携することで、リスクを最小限に抑え、収益を最大化し、自身の目的に合致した最適な土地活用を実現する可能性が高まるでしょう。
私たち湘南ユーミーまちづくりコンソーシアムが、遊休地の可能性を最大限に活かします。
遊休地の有効活用は、収益を生むだけでなく、節税や地域貢献にもつながる可能性も秘めています。しかし、法規制や初期費用、ニーズ調査など不安要素も多く、何から手を付けたらいいか分からないという方もいるのではないでしょうか。
湘南ユーミーまちづくりコンソーシアムでは、ユーミーらいふグループの総合力を活かし、遊休地の特性や所有者様のご希望に寄り添いながら、「初期費用を抑えた活用」から「収益性を重視した本格活用」まで、幅広い選択肢をご提案します。
「自分の土地に合った活用法が知りたい」「将来を見据えた運用をプロと一緒に考えたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。土地を負担ではなく資産として活かす第一歩を、今ここから始めましょう。