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不動産投資で失敗しない「利回り」とリスクの関係から読み解く算出方法

不動産投資 利回り

不動産投資をする際に注目すべきポイントである「利回り」について、正しい算出方法と注意点をご紹介します。

一般的に利回りは高い方が良いように思いますが、実はそれだけでは本当に良い物件なのか判断できない要素があります。失敗しないためにも、きちんと理解しておきましょう。

 

そもそも利回りとは?基礎知識

一般的に、利回りとは投資金額に対し、年間どれだけの利益が得られるのかを求めた指標です。
例えば、年間収入が100万円、投資額が1000万円の場合、次のような計算式で算出します。

 

【利回りの計算式】
年間収入 ÷ 投資額 × 100 = 利回り(%)

【年間収入100万円、投資額1000万円の場合】
100万円÷1000万円×100=10%

 

つまり、利回り10%の投資という事です。
この指標を使って、投資効率の良し悪しを判断することができます。

 

1.同じ金額ならばどっちが投資効率の良い物件か?

5,000万円の投資金額の場合、

 

A:年間収入 400万円
→ 400万円÷5000万円=利回り 8%

B:年間収入 500万円
→ 500万円÷5000万円=利回り10%

 

これは、わかりやすいですね。
Bの方が、投資効率が良いという事になります。

 

2.物件の規模や投資金額が異なる場合はどっちの物件が良いのか?

A:投資額 6000万円  年間収入 420万円
→ 420万円÷6000万円×100=利回り 7%

B:投資額 4000万円  年間収入 320万円
→ 320万円÷4000万円×100=利回り 8%

 

この場合、年間収入はAの方が良いのですが、利回りはBの方が良いことになります。
年間収入額を求めるならばA、投資効率を求めるならばBという事になります。
物件を選ぶ際に利回りを一つの指標として比較し検討することができるのです。

次に実際の不動産投資における利回りについてまとめてみました。
まず、不動産投資で言われている利回りについては、「表面利回り」と「実質利回り」があります。
この2つの違いと利回りに潜むリスクを理解し、不動産投資の成功につなげましょう。

 

一般的な利回りとは「表面利回り(グロス利回り)」

不動産投資で一般的に使われている利回りとは「表面利回り」(グロス利回りとも言われます)のことです。

表面利回りとは、「その物件が満室となった場合の年間収入(家賃・共益費・駐車場などの全ての収入)を物件の価格で割った数値です。

 

満室時の年間収入 ÷ 物件価格 × 100 = 利回り(表面利回り)(%)

 

この利回り(%)が高ければ高いほど、収益が多くなり「良い物件」と考えられています。
例えば、目安として利回り5%よりも10%の方が良い物件?お買い得?と考えられています。

ただし、この利回りだけでは本当に良い物件なのか判断できない要素があります。
表面利回り(グロス利回り)が高ければ良いとは限らないのです。
表面利回りは不動産投資により必要となる費用や収益に対する費用が考慮されていません。

本当の投資に対する収益(リターン)ではないため、正確な投資効率を見極めることができません。
不動産投資における表面利回りは目安として考えておき、最終的には次の「実質利回り」で物件の良し悪しは判断しましょう。

 

実際の利回り「実質利回り(ネット利回り)」

それでは、実際の利回り「実質利回り」(ネット利回りとも言われます)とは、どのようなものでしょうか?

不動産投資により物件を取得すると、賃貸経営が始まります。
その際、次のような経費が必要となります。

 

  • 維持管理費(管理会社への賃貸管理委託費用、清掃費用、修繕費用など)
  • 固定資産税・都市計画税
  • 損害保険料
  • その他諸雑費(共用部の電気・水道料など)

 

これらを「年間必要経費」とし、満室時の年間収入から差し引いて求めた指標が「実質利回り」です。

 

(満室時の年間収入-年間必要経費)÷ 物件価格 × 100 = 利回り(実質利回り)(%)

 

例えば、年間収入が100万円、年間必要経費が20万円、投資額が1000万円の「物件A」があったとします。この物件の場合は、以下のようになります。

 

表面利回り
100万円÷1000万円×100=10%

実質利回り
(100万円-20万円)÷1000万円×100=8%

 

以上のように、実質利回りは物件取得後に必要となる年間の経費を考慮した利回りのため、実際の投資効率をより正確に判断することができるのです。

 

空室と諸費用も考慮して利回りを計算してみる

その他、実際の年間収入も必ず収入が見込めるわけではなく、空室などが発生する場合も考えられます。

実際の年間収入は、満室時の年間収入から空室分の賃料を差し引いた金額になります。常に満室なら良いのですが、賃貸物件において入退去は必ず起こります。
つまり、退去が発生すれば、その期間の家賃収入が見込めないため空室損失が発生するのです。

例えば、先ほどの実質利回り計算例の「物件A」で、年間5%の空室率が発生すると仮定すると、入居率は95%になります。

満室時の年間収入が100万円、空室率5%(入居率95%)、年間必要経費が20万円、投資額が1000万円となり、実質利回りは以下のようになります。

 

(年間収入:100万円×入居率95%-必要経費:20万円)÷物件価格:1000万円×100=7.5%

 

更にもう一つは、物件を取得する際に必要となる仲介手数料や登記費用などは、一般的に利回り計算には考慮されていません。本当の投資利回りを考えるならば、これらの物件取得に必要となる費用も考慮しましょう。

物件取得で必要となる諸費用は、一般的に物件価格の約7~10%程度です。
「物件A」のケースで計算してみると、このようになります。

 

(年間収入:100万円×入居率95%-必要経費:20万円) ÷ (物件価格:1000万円+諸費用:100万円(物件価格の10%と仮定))×100=6.81%

 

自己資金に対する利回りを考えてみる

これまでは、物件の表面利回りや実質利回りについて記載しましたが、この利回りはあくまで全額自己資金で投資した時の利回りです。

不動産投資では、金融機関による融資を併用するケースが多いため、実際の自己資金に対する利回りを計算した方が、ある意味、株や投資信託などの利回りと同じ基準での比較ができるのではないでしょうか?

例えば、「物件A」(物件価格1000万円+諸費用100万円)を、自己資金200万円、借入900万円で購入したとします。

借入条件が、金利1.5% 返済期間30年 元利均等返済の場合、年間返済額は、約37万円となります。
つまり、この「物件A」の手取り収入は、以下のようになります。

 

手取年間収入
100万円 × 入居率95% - 必要経費20万円 - 返済額37万円 = 38万円

自己資金に対する利回り
手取収入38万円 ÷ 自己資金200万円 × 100 = 19%

 

以上、様々な視点での利回り計算をまとめてみました。

 

利回りが高い=リスクが高いのか?

ここで、利回りとリスクの関係についてお話ししたいと思います。
なぜ、物件ごとに利回りが異なるのでしょうか。

一般的に利回りが高い物件は、何らかの理由で投資物件として人気がない=「リスクがある」と考えておいてください。
例えば、満室時の年間収入で100万円の都心物件と地方物件を比較してみます。

都心物件は入居者に人気が高く、常に満室で、空室になってもすぐ次の入居者が決まり、将来の家賃の下落率も低く、また売却しやすいと考えられています。

一方で、地方物件は少子高齢化・人口減少により、家賃の下落率や空室率も発生も高くなりやすく、空室になると次の入居者が決まるまで長い時間が必要になると思われています。

つまり、一般的にこのような場所の物件を購入してしまうと賃貸経営が成り立たないのでは?と思われており、売却したくても安くしないと売れない、つまり都心と同じような希望価格で買主を見つけることが難しくなります。

 

地方物件
リスクが高いから人気がない = 売れない = 価格を安くする = 利回りが高い

都心物件
リスクが低いから人気がある = 売れる = 価格は高い = 利回りが低くなる

 

物件価格は次のように価格設定されているとも言えます。
例えば、満室時の年間収入が500万円の場合、
都心物件の利回りが5%、地方物件の利回りが10%だとすると、

 

物件価格=満室時の年間収入÷利回り(表面利回り)(%)

  • 都心物件:500万円÷ 5%=10000万円
  • 地方物件:500万円÷10%= 5000万円

 

という価格設定になります。
不動産投資のリスクと利益の関係が物件価格に影響していることがわかるかと思います。

よって、同じ年間収入ならば、都心物件よりも地方物件は「利回りが良くて価格も安い」となるのです。
このように、不動産投資においては利回りの高い物件ほど、不動産投資にかかわるリスクが高い物件と言えます。

一般的には、「利回りの高い物件を探す = リスクの高い物件を探している」ことにもなり得るので、利回りの高さだけを重視しての物件探しには注意しましょう。

 

損しない物件選びの利回りチェックポイント

表面的な利回りの見方で物件を判断してしまうと、実は購入後に「失敗した」と思ってしまう隠れた秘密があります。
損しないために確認すべきポイントをまとめてみました。

 

物件価格は税込か?税別か?

利回り計算の元になる物件価格は、消費税込か別かを確認して下さい。

一般的な物件価格は、「土地価格 + 建物価格 + 消費税相当(建物価格に対して8%)」ですが、稀に消費税相当を除いた物件価格で表面利回りを示しているケースもあります。

例えば、土地価格:2000万円、建物価格:2000万円、消費税相当:160万円、年間収入:400万円の場合の表面利回りは、

 

  • 物件価格(税別)の場合:表面利回り10%
  • 物件価格(税込)の場合:表面利回り9.61%

 

となります。

税別の場合は利回りが高く見えてしまうため、基準を同じにして比較しましょう。

 

同じ利回りなら、仲介手数料が不要な物件の方が得

不動産投資は、物件価格以外にも諸経費が必要となります。この諸経費は、利回り計算の元になる物件価格に含まれていないのが一般的です。

そのうち、大きな金額になる諸経費の一つとして仲介手数料があります。仲介手数料は、物件を紹介してくれた業者に支払う手数料で「物件価格×3%+6万円」相当の金額となります。
よって、「売主」から物件を直接取得する場合には不要となる費用です。

売主から直接購入できる物件情報は少ないのですが、必要となる諸経費が約3%少なく済むことは、それだけでメリットがあると言えます。

見方としては、「売主」か「媒介・専任媒介」などと記載されている取引形態で、「売主」と記載されている物件は、仲介手数料が不要です。

 

空室の募集家賃が適正なのか確認する

空室がある物件を検討する場合には、空室部分の募集家賃を確認して下さい。
利回りの元になるのは、家賃収入が大きな要素です。

これまでの仕組みで家賃が高ければ高いほど、利回りが良くなることはご理解いただけたかと思います。
つまり、売主側は売却益を多く得るために、家賃設定を高くすることで見た目の利回りを確保し、物件価格を高くするという方法を考えるのです。

その家賃設定が相場よりも高く設定されて利回り計算されていた物件を購入してしまったら、購入後に家賃を下げなければ満室にならないという事態が発生しかねません。

例えば、全戸空室の新築物件でのケースを計算してみましょう。
家賃設定が月額5万円×10戸の物件を購入したとします。
満室時の年間収入は、

5万円×10戸×12ヵ月分=600万円
表面利回りが10%の物件だとすると、6000万円で購入することになります。

しかし、実際には4万円でしか入居者が入らない場合、満室時の年間収入は
4万円×10戸×12ヵ月分=480万円
480万円÷6000万円=8%
の表面利回り物件を取得したことになります。

 

空室がある物件では、あくまでも想定の家賃収入、つまり「満室になったら」が前提での利回りが計算されています。この想定した家賃収入が相場家賃よりも高く設定されていたら、結果として高い利回りの物件に見えてしまいます。

知らずに物件を高く買ってしまい損することにもなりかねません。
空室のある物件を検討する場合は、利回り計算の根拠である家賃設定が周辺相場に見合っているか確認することが重要です。

 

長期入居の家賃と、実際の家賃相場を確認する

満室物件でも注意する点があります。特に中古物件の場合、例えば新築当初から住んでいる方は、新築当初の高い家賃設定のまま入居されている場合があります。

もし、この方が退去してしまったら、実際に同じ家賃で募集できない場合があります。
結果として、家賃収入が減り、利回りが下がることになります。
長期入居者が多く、実際の家賃が現状の相場観より高めに設定されている場合、収入減が大きくなる可能性があるのです。

満室物件の利回りでも、現状の家賃と周辺相場の家賃に差が発生している場合があるため、いつから入居者が住んでいる家賃なのか、 周辺相場などと比較し、退去後の募集家賃との乖離がないかどうか確認することが重要です。

 

入退去の多い物件かどうか確認する

利回りは、満室時を前提とした1年間の収入合計をもとに計算されています。
空室が多く発生する物件は、次の入居者が決まるまでの期間は家賃収入が入りません。
結果、実質利回りが低下することになります。

更に人気のない物件は、入居者募集の際には賃貸業者にADと言われる広告料を多く支払う事や、一定期間の家賃をサービスするフリーレントなどの対策をしなければ入居者が決まらないという事態も発生します。

高い利回り物件でも人気のないエリアや物件の場合は、

 

  • 空室の発生件数が多い
  • 空室から次の入居者が決まるまでの期間が長い
  • 入居者募集する経費も多く必要

 

などの可能性もあり、結果として利回りが低くなる可能性があるのです。

一方で、表面利回りが低くても空室が少ない人気物件の方が安定経営することができるため、結果として表面利回りが高い物件よりも、お得な場合があります。
賃貸需要を含め、空室率を加味したキャッシュフロー(収支)を計算し、実質利回りを確認することが重要です。

 

家賃や入居者の状況は「レントロール」で確認

長期入居の状況や入退去の激しい物件かどうかを確認するには、物件の「レントロール」を確認して下さい。

レントロールとは、各部屋の契約者名(入居者)・家賃・共益費・敷金・契約期間などの賃貸状況が確認できる資料です。興味がある物件ならば「レントロールを下さい」と求めれば、守秘義務契約を締結し開示してくれます。

 

まとめ

利回りの見方と計算方法については、専門的な視点やキャッシュフロー(収支)の計算が必要となります。

親切な業者は、それらを加味した物件を紹介してくれるとともに、質問すると答えてくれます。

物件選びの際には、ぜひ業者の担当者へヒアリングしてみてください。

参考:全国の家賃相場や利回りなど相場観は、下記のようなサイトから確認できます。

HOME’S不動産投資
http://toushi.homes.co.jp/owner/