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タワマン節税の基本と2024年改正の影響を解説|購入前に知っておきたい注意点とは?

タワーマンションを利用した節税対策、いわゆる「タワマン節税」は、相続税の負担を軽くできる方法として注目されてきました。しかし、2024年の税制改正で区分所有補正率が導入され、従来の評価制度が見直されたことで、かつてのような節税効果を得るには工夫が必要になり、単純な節税目的だけでの活用は難しくなっています。

本記事では、タワマン節税の仕組みや評価方法のポイント、改正の具体的な内容や過去の否認事例、今後の活用における考え方まで、基礎から丁寧に解説します。節税効果だけに注目せず、資産の将来的な価値やリスクも含めてどのように判断していくべきかを一緒に考えていきましょう。

そもそもタワマン節税とは?仕組みをやさしく解説

タワマン節税という言葉を聞いたことはあっても、その具体的な仕組みまではよくわからないという方もいるでしょう。ここでは、タワマン節税が成立してきた理由についてわかりやすく解説します。

相続税評価額と時価の差を活用した節税方法

タワマン節税とは、実際の購入価格(時価)と、相続税計算に用いられる評価額(相続税評価額)との間に生じる差を利用して、課税対象となる財産の価額を抑える手法を指します。 不動産の相続税評価額は、原則として建物部分については「固定資産税評価額」、土地部分(敷地権)については「路線価」を基に算出されます。

これらの評価額は、一般的に市場での取引価格(時価)よりも低くなる傾向があり、例えば土地の相続税評価額は時価の約8割、建物は約7割程度が目安とされています。仮に1億円の現金を相続財産として保有していた場合、原則としてその1億円全額が課税対象となります。

しかし、同じ1億円で購入した不動産の相続税評価額が例えば3,000万円であれば、7,000万円ほどの課税対象額を大幅に圧縮できる可能性があります。この時価と相続税評価額の乖離に着目したのが、タワマン節税の基本的な考え方です。

高層階の評価が低くなりやすい構造が節税に貢献

タワーマンションでは、高層階の住戸ほど眺望や希少性などから市場では高値で取引される傾向があります。しかし、改正前の相続税評価においては、建物の固定資産税評価額は床面積などに基づいて算出され、階層による評価額の差は市場価格ほど大きくありませんでした。

つまり、例えば同じ専有面積であれば、市場価格が大きく異なる40階の部屋と5階の部屋でも、相続税評価額はほぼ変わらないという状況が生じ得ました。結果として、高層階の住戸ほど時価と相続税評価額の乖離が大きくなり、相続税の節税効果が高まるという構造がありました。ただし、この高層階における評価の有利性は、2024年の税制改正における主要な見直し対象の一つとなっています。どのような変更が加えられたのか、具体的な影響については後ほど詳しく解説します。

持分の土地面積が少なくなる点も評価を抑える要因だったが…

タワーマンションは総戸数が多いため、各住戸の敷地権の割合(土地の持分)が小さくなる傾向があります。これにより、伝統的な路線価に基づく土地部分の評価額は、戸建て等と比較して相対的に低く算出される一因となっていました。

しかし、2024年の税制改正で導入された新評価方式では、敷地権の割合の小ささ(「敷地持分狭小度」として指標化)が、築年数・総階数・所在階などと共に「評価乖離率」を算出する際の要素となります。結果として、乖離率が大きいと判断される場合には、マンション全体の相続税評価額が従来よりも引き上げられる方向に作用する可能性がある点に留意が必要です。

2024年の税制改正で何が変わった?


これまで有効とされてきたタワマン節税ですが、2024年の税制改正によって大きな見直しが入りました。評価の仕組みに新たなルールが加わり、これまで節税につながっていたポイントが通用しにくくなっています。ここでは、改正の具体的な内容とその影響について、押さえておきたい3つの変化に絞って解説します。

評価方法に「補正率」が加わった

2024年1月1日以降、相続や贈与で取得する居住用の区分所有マンションについて、新たな評価方式が導入されました。この方式では、まず従来の評価方法(建物は固定資産税評価額、土地は路線価)で算出した価額に対し、マンションの特性(築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度)を反映した「評価乖離率」を基に「評価水準」(=1÷評価乖離率)を計算します。

この評価水準が0.6未満(つまり、従来の評価額が国税庁の算定する理論上の時価の6割に満たない)と判断される場合、「区分所有補正率」(=評価乖離率 × 0.6)を用いて評価額が引き上げられます。これにより、評価額は理論上の時価の6割の水準に調整されることになります。

逆に、評価水準が1を超える場合(従来の評価額が理論上の時価を上回る場合)には、評価額が引き下げられる補正(区分所有補正率=評価乖離率)も行われます。評価水準が0.6以上1以下の場合は、補正は行われません(区分所有補正率は1となります)。こうして極端な評価額の乖離を是正し、より実態に近い評価を目指すものとなっています。

築年数や階数なども評価に影響

新たな評価制度では、評価乖離率という指標を用いて評価額の補正が行われます。評価乖離率は、主に以下の4つの要素と固定値を加算して計算されます。

・A:築年数 × (マイナス係数):築年数が浅い(新しい)ほど、評価乖離率は高くなる傾向があります。
・B:総階数指数 × (プラス係数):マンション全体の階数が多いほど、評価乖離率は高くなる傾向があります。
・C:所在階 × (プラス係数):住戸の所在階が高いほど、評価乖離率は高くなる傾向があります。
・D:敷地持分狭小度 × (マイナス係数):敷地持分狭小度(敷地利用権の面積 ÷ 専有部分の面積)が小さい(つまり専有面積に対して土地の持分が小さい)ほど、このD項のマイナスの影響が小さくなり、結果として評価乖離率全体を押し上げる方向に作用しやすくなります。

例えば、築浅で「総階数が多く」「高層階にあり」「敷地持分が小さい」といったタワーマンションに典型的な特徴を持つ物件は、評価乖離率が高まりやすくなります。その結果、評価水準が0.6未満となって区分所有補正率による評価額の引き上げ対象となる可能性が高まる点に注意が必要です。

 

新評価方式が適用される対象の明確化

評価方法の見直しは、あくまで2024年1月1日以降に相続、遺贈または贈与により取得された「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)が対象です。具体的には、以下の物件は、新評価方式の対象外とされています。

・事業用物件(例:オフィスビルや店舗などのテナント物件)
・1棟所有の賃貸マンション(区分登記されていないもの)
・地階を除く総階数が2階建て以下の低層の集合住宅
・一棟の居住用専有部分の数が3戸以下で、その全てを所有者やその親族が居住の用に供している小規模な建物
・不動産業者が販売目的で保有する棚卸資産に該当するもの

したがって、今回の改正はこれらの不動産には直接影響しないため、相続対策として今後も活用できます。

節税目的だけの購入には注意!リスクを正しく理解しておこう

タワマン節税は魅力的に見える一方で、誤った理解や目的で購入すると、思わぬリスクを招く可能性があります。特に税務署は、節税目的だけの購入や短期保有といった意図にも厳しく目を光らせています。対策を講じる前に、否認リスクや調査のタイミングなど、見落としがちな注意点を確認しておきましょう。

節税が目的だと判断されると否認されるケースも

過去には、相続開始直前に高層階のタワーマンションを多額のローンを組んで購入し、相続税を財産評価基本通達に基づいて低く申告した後、短期間で売却して現金化したケースがありました。最終的には、税務署が「節税目的の不自然な取引」と判断し、財産評価基本通達の総則6項に基づいて、通常の評価方法を否認した例があります。このような取引は、節税目的が明白であると判断されやすく、追徴課税のリスクが高まります。

2024年の評価制度の改正には、このような予測困難な否認リスクを減らす狙いも含まれていますが、総則6項そのものが廃止されたわけではありません。新ルール適用後の評価額であっても、なお時価との乖離が著しく、その取得が「節税目的の不自然な取引」であるならば、「租税回避行為」とみなされ、総則6項により財産評価基本通達に基づいた評価額を否認されるリスクは残っています。

適正な節税とされるには「長期保有」と「実際の利用」がカギ

節税の有効性を高め、税務署からの否認リスクを軽減するためには、単にタワーマンションを購入するだけでなく、実際に活用していた事実が重要です。例えば、被相続人が生前に実際に居住していた、相続後に相続人が居住・賃貸して長期間保有している場合など、実際の利用実績があれば、単なる節税目的と見なされにくくなります。これらは、取引が相続税の軽減のみを目的としたものではないことを示す状況証拠の一つとなり得るからです。

ただし、長期保有に関する具体的な年数基準が法律で定められているわけではなく、あくまで個別の事案ごとに総合的に判断されます。相続人自身がそのマンションに住み続ける場合、一定の要件(同居親族であること、申告期限までの居住継続・保有継続など)を満たせば「小規模宅地等の特例」の適用を受けられる可能性もあり、これは土地部分の評価額を最大80%(330㎡まで)減額できるため、相続税負担を大きく軽減できます。

なお、小規模宅地の特例は相続税負担を大きく軽減できる一方で、その適用要件は非常に複雑であるため、適用をする際には事前に税理士に相談しましょう。

相続調査は数年後に行われることもある

税務署による相続税の調査は、申告期限から1~2年後に行われるケースが一般的ですが、原則として申告期限から5年間(悪質な脱税の場合は7年間)は調査の対象となる可能性があります。そのため、相続税申告後すぐに売却するなどの行動は、当初の取得目的を疑われる一因ともなり得るため、調査期間中の運用や売却タイミングにも注意が必要です。

 

今後のタワマン活用は「節税+価値維持」を両立していくことがポイント


2024年の改正を受けて、これからのタワマン活用にはこれまで以上に慎重な判断が求められます。節税効果だけを目的にした購入では通用しにくくなっており、今後は「資産価値の維持」や「不動産としての活用方法」まで視野に入れることが重要です。ここでは、これからのタワマン戦略を考えるうえで押さえておきたい視点について解説します。

タワマン単体での節税から、戦略的な不動産活用へ

今後は、タワーマンション単体の節税効果に過度に依存するのではなく、より広範な視野での「戦略的な相続対策」が求められます。例えば、以下の制度と組み合わせることで、効果的かつ安全な対策が可能になります。

・生命保険の活用: 死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、納税資金の準備にも役立ちます。相続税は原則として現金一括で納付しなくてはいけないため、「納税資金の確保」のため生命保険の活用は、「節税」と併せて考えることが大切です。

・配偶者控除(配偶者の税額軽減):
配偶者が相続する財産には、最低1億6千万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかからない大きな控除枠が設けられています。

・小規模宅地等の特例:
被相続人や生計を同じくする親族が居住していた宅地などについて、一定の面積(最大330㎡部分)まで評価額を最大80%減額できます(タワーマンションの敷地権にも適用可)。

・事業用不動産の活用:
事業の用に供されていた不動産には、別途評価減の特例が適用できる場合があるほか、2024年のマンション評価改正の直接的な対象外であるため、相対的なメリットが見直される可能性があります。 これらを組み合わせることで、より安全かつ実効性の高い相続対策の構築が期待できます。タワーマンションも、あくまで資産形成全体の一部として、その価値やリスクを総合的に評価する視点が大切です。

<h3>将来の資産価値も含めて判断することが重要</h3>

節税効果だけに目を向けてしまうと、将来的な価値下落リスクや、高額な管理費・修繕積立金といった運用上の課題を見落とすことになりかねません。タワーマンションを資産として評価する際には、以下の要素を踏まえて総合的に検討することが不可欠です。

・立地条件(交通利便性、周辺環境、将来の再開発計画の有無など)
・物件の質やブランド
・流動性(売却や賃貸のしやすさ)
・管理体制の質(管理組合の運営状況や大規模修繕計画の妥当性など)

相続税評価額の低さだけに注目するのではなく、長期的な保有に伴うリスクや、賃貸に出す場合の収益性なども含めて慎重に選定することが、これまで以上に求められます。

 

タワーマンションの相続対策は、節税だけでなく「本質的な価値」を見極めることが大切

これまで有効とされてきた「タワマン節税」は、2024年の税制改正により、形式的な活用では効果が薄れつつあります。節税目的のみの購入や短期売却はリスクを伴い、将来的な追徴課税の可能性もゼロではありません。とはいえ、立地や建物の資産価値、長期的な保有計画、相続人のライフスタイルに応じた設計次第では、依然として有効な選択肢となり得るのも事実です。

湘南ユーミーまちづくりコンソーシアムでは、最新の税制や市場動向を踏まえながら、相続税対策としての不動産活用をご提案しています。「今後もタワーマンションは有効なの?」「節税だけでなく資産価値を保てる運用をしたい」といったご不安があれば、ぜひ一度ご相談ください。私たちと一緒に、節税・資産形成・将来の家族の安心を見据えた最適なプランを描いていきましょう。